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リストラ対処法

6.不当解雇と闘う

(3)解雇の種類と、どのような場合違法なのか

労使の間で結ばれた雇用契約を会社の都合だけで解約するには正当な理由が必要であることを知っておいてください。またこの場合、会社業績の不振や経営の悪化は労働者の責任ではないのです。ですから労働者を解雇するために会社が「正当な理由」を探して解雇通知することになります。現在の多くのリストラは、はじめに解雇があり、理由はあとから探してこじつけるのです。

この解雇に際して表示された「解雇理由」が重要で、このとき表示されなかった事柄ををその理由として斟酌してはならない(山陽電気鉄道事件)ことになっています。

そこで労働者の側は、解雇には普通解雇、懲戒解雇、整理解雇の三つがあり、その内容の違いを知っておくことが必要です。それによって自分に対する解雇がどの種類にあたるのかを知ることができるからです。

A 普通解雇

普通解雇とは就業規則の解雇理由に基づく病弱・勤務成績不良・労働能力が著しく劣る等を理由とする解雇です。この場合1ヶ月前に解雇予告をしたり、予告手当を支払っても正当な理由がなければ無効となります。例えば勤務評価の客観的資料が存在しているか、公平な査定か、全従業員を対象にしたものかなどの条件が必要です。

「仕事上のミスがが多い」とか「他の従業員や上司との協調性がない。」とか「反抗的」というだけでは合理的理由とは言えません。

注意すべき点は1.会社が解雇理由とすることが事実か2.その理由が解雇に値するものか3.その根拠は何か、何を基準としているのか、以上の点を会社に説明を求めて記録しておくことです。

B 懲戒解雇

懲戒解雇とは就業規則に列挙されている懲戒事由に基づく解雇であり、それ以外の事由では解雇できません。就業規則や労働協約で賞罰委員会の設置と運営基準が定められている場合、所定の解雇手続きと基準に違反しておこなわれた解雇は無効となります。

この懲戒解雇について労働者はどのように理解すべきでしょうか? 対等の立場で結ばれた雇用契約であるのに会社の方にだけ懲戒権(制裁罰を下す権利)が認められるということは本来筋が通らないのです。それは資本主義制度の下で経済的地位の相違が一方の側にもたらした権力であり、支配者が被支配者に対しておこなう「経営秩序維持」のための労働者に対する不利益処分です。法律的契約の上で「対等」であっても、その内容は賃金奴隷制に他ならないという資本主義の本質が露呈したものといえます。

懲戒解雇は労働者の側に失業と退職金の不支給・減額という大きな打撃を伴う解雇であり、そこまで重大な懲戒権が必要なのか?という疑問が生じてくるし、労働者や労働組合としては納得できない点です。契約上では対等関係であるのに労働者への見せしめによって会社の職場における専制的支配を保障するものとして懲戒解雇が存在しているというべきです。

しかし労働基準法(第87条)は懲戒処分の種類や程度を就業規則に定めることを義務付けています。

したがって我々労働者は法律上の懲戒のルールの枠内で闘わなければならないのです。

「リストラに負けない100の知恵」(中西義徳・芝威監修杉村知美著)という本は、会社が懲戒処分をする場合の守るべきルールとして次の7点を上げています。

  • 懲戒事由や処分の内容を明示する
  • すべての労働者を平等に取り扱う
  • ひとつの違反事項に対して2度以上の処分はできない
  • 懲戒規定が定められる以前の違反行為に対しては適用できない
  • 懲戒の範囲は違反行為をおこなった当人に限られる
  • 処分の種類や程度の客観的な妥当性
  • 手続きの妥当性、当人に弁明の機会を与えること

懲戒解雇された場合は就業規則や労働協約や上記のルールをチェックして、どのような証拠が必要かを検討した上で団体交渉に望むようにします。もちろん交渉内容を記録しておくことが重要です。

それではどのような場合懲戒解雇は無効となるのでしょうか?

すでに書いたように一般的に懲戒は支配・服従関係を前提にしている概念なので、個人の平等を原則とする近代市民法とは相容れないのであり、しかもその懲戒が「企業の秩序維持のため」であるのなら懲戒解雇でなくとも」より軽い処分で目的を達成できるのではないか、と考えることもできるのです。つまり懲戒の程度が客観的妥当性を欠いている場合懲戒解雇は無効というべきです。判例によればこの場合の妥当性は解雇(免職)以外の「軽い処分に付する余地のない場合に限られる」のであり「その者に将来改善の見込みが乏しい場合」に限って許されるのであり、そうでない場合は懲戒権行使の正当範囲を逸脱した権利の濫用があるとされます。

また過去に同様の懲戒の事実が考慮されなければならないので、過去の同様の事例が出勤停止や降格などの軽い処分であった場合、懲戒処分は権利の濫用となります。

C 整理解雇

整理解雇とは会社が経営上の困難からおこなう解雇で、裁判所の判例法として「整理解雇の四要件」が確立しており、これに基づかない整理解雇は無効となります。

戦後多くの労働者が不当解雇に反対する長い裁判闘争を通じて「整理解雇の四要件」という判例による解雇の制限を作り上げてきました。従ってそれは労働者の闘いの成果であり、同時に終身雇用制度下での裁判所による整理解雇の制限であります。

整理解雇の四要件とは整理解雇の正当性を判断する“基準”あるいは“要素”といえます。

<整理解雇の四要件の説明>

1.人員整理を行う業務上の必要性があるか

2〜3年赤字でどうしても整理解雇をしないと倒産することが確実であるかbr> この場合の「回避の努力」とは「人員整理を行うのは最後にしなさい」ということで、大企業であること、従業員の構成が代替性があること、企業の経営状態=人員整理の緊急性から回避措置が決まる。

<具体的な回避措置>

経費の削減、時間外労働の中止、新規採用の中止、希望退職の募集、一時帰休の実施、出向や転籍、臨時工・派遣・パートの雇い止め、役員報酬のカット、役員削減、などの経営再建の措置をとったか。

3.整理解雇基準と人選の合理性があるか

「トラブルを起こさない退職・解雇の実務と法律知識」(弁護士石嵜信憲著)という本によると整理解雇の基準はA 貢献度、B 密着度、C 被害度をもとに設定する。

  • 貢献度とは
    会社にどれだけ貢献しているかという程度で、能力や人事考課の評価、出勤率、スキルなどが低ければ整理解雇の対象となる。
  • 密着度とは
    正社員の方がパートや期間雇用者よりも密着度が高い。密着度が低い者から先に解雇されることになる。ただし、人件費の削減が緊急の経営課題の場合には、人件費の高い正社員が先に解雇対象となる。
  • 被害度とは
    解雇されることによって受ける労働者の生活上の被害度で、共稼ぎで子どもがいない場合とか独身の場合は被害度が低いので、先に解雇者の対象になる。
    実際の運用では、「貢献度を第一基準」とし、貢献度が同等の社員については被害度を選定の基準とするのが合理的な選定基準だそうです。
    弁護士の石嵜さんによると、「抽象的な査定評価を基準とする場合や配転が困難な者、技能が低い者といった使用者の主観的判断の入り込む余地が大きい基準をもとに選定した場合には、解雇無効と判断した裁判例が多い」そうです。

4.労働組合と誠意を持って十分な協議をつくしたか、また労働者に誠意を持って十分に説明したか

組合が過半数組合の場合、協議期間は3ヶ月程度必要と石嵜さんは考えています。協議の内容は解雇の必要性、規模、方法、人員整理の基準について文書で説明し、労働者の納得を得る協議をつくさねばならないし、少数派組合であっても協議を尽くしておかないと手続き的瑕疵(かし=キズ)になる場合もある。

リストラ経営の広がりの中で、合理的な理由のない解雇や解雇の法律による制約を無視した解雇権の濫用や整理解雇の四要件に違反するケースが多く、個別労働紛争も激増しています。経営者団体や大手労組幹部などから「解雇の自由化」の声が高まっており、これを受けてか、東京地裁が業務上の必要性を理由に「整理解雇の四要件」を経営側に有利に解釈する決定や判決をたて続けに出して、「司法の反動化である」との批判が高まっています。従って「整理解雇の四要件」を“リストラの嵐”の中で判例が経営側に有利に修正されつつあると思ってください。

法律を変えずに情勢に応じて適時に変更できる点が、判例法が資本家にとって便利な点であるのです。

<泣き寝入りしないために>

日本の労働法が労働者大衆にとって分かりにくいのは、条文規定がザル法であるか、罰則が軽すぎること、慣習法や判例法の占める比率が高いためであり、しかも判例が変化する事に原因があり、また日本の労働裁判が長期化するため経済力のない労働者が泣き寝入りする場合があまりにも多いのです。

年間数十万件もの労働相談が各地の窓口に殺到しても、裁判所の個別労働紛争は年間二千数百件(それでも急増した)にしかならないのは、大半の労働者が闘うことをあきらめている現状を示しています。このことは、経営者の不当な攻撃が“やり得”となっていることであります。さらに言えば、私たち個人加入のユニオンの組織力の小ささが反映したものでもあるのです。

地域ユニオンの発展とその“ネットワーク化”と、リストラ対処法への熟達が強く求められていると思うのです。

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